「生活習慣病」とは1996年ころから用いられるようになり、以前は成人病と言われ、生活習慣(食生活や運動、喫煙、飲酒習慣など)に着目し捉えなおした用語になります。国際的には慢性閉塞性肺疾患(COPD)を加えてNCDs(非感染性疾患)という言葉が使用されています。生活習慣病には糖尿病、肥満症、脳卒中、心臓病、高脂血症(脂質異常症)、高血圧症、動脈硬化症、痛風(高尿酸血症)などがあります。その多くは初期の段階では自覚症状を伴うことが少なく、職場検診や住民健診などを受けられた際に初めて異常を指摘されることがあります。しかし自覚症状がみられないことから、医療機関を受診されない方もいらっしゃいます。しかしこれら疾患を未治療のまま経過をみられますと後に大病に繋がることが心配されます。当院では生活習慣病が大病に繋がる前に医学的な根拠に基づいた指導・治療を行うことで患者さんが健康な日々を送られるようにサポートさせていただきます。生活習慣病の改善には、まず日常生活の改善から始めることがほとんどです。ですが、今までできなかった健康的な生活を継続していくことは簡単なことではありません。そのため日々の経過を患者さんと一緒に二人三脚で歩んでいくことを心がけます。生活習慣改善のみではコントロールが出来ない場合は必要に応じて薬物治療を行います。もし健診を受けられその結果「要受診」、「要精査」、「要治療」であった際には自覚症状をともなっていない場合においてもお気軽に一度当院へご相談下さい。
職場での検診や地方自治体による健康診査など健康チェックの機会も多い中で、高血圧は生活習慣病の中でも大きな位置を占めています。今では検診が行きわたり自分の血圧が高いのかどうかをある程度知っている方も多いのではないでしょうか。しかし血圧が高いことを知っていても、一般的に高血圧には特有の自覚症状はほとんどみられません。そのためどこで、どのように治療を受けたらよいのかで戸惑っている方も多いのではないでしょうか。そもそも血圧とは心臓はポンプのように伸縮することで全身に血液を送り出しているのですが、その際に血管にかかる圧力のことをいいます。血圧には収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)があり、最高と最低の数値をそれぞれ測定します。この血圧が慢性的にある一定の範囲を超えて高い状態が続いている状態が高血圧です。高血圧と診断される数値は外来測定時にて最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上の場合です。血圧の高い状態が継続してみられると血管壁が圧力により常に負荷がかかることになります。これにより血管壁が肥厚したり、弾性がなくなったりすることで動脈硬化が進行しこれにより狭心症、心筋梗塞、脳卒中、腎臓病などの病気を助長することがあります。そのため高血圧は生命を脅かす「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と言われています。原因については遺伝的要因(家族性)、塩分摂取量が多い、嗜好品(喫煙、飲酒)の過剰摂取、運動不足、肥満、精神的ストレスなどの環境要因が重なることで引き起こされると考えられています。高血圧の治療で最も大切なものが食事療法です。食塩摂取量を1日6g未満に抑え、栄養バランスの摂れた食生活をとるように努めます。そして適正体重の維持を目指します。適正な体重はBMI(Body Mass Index)で表します。BMI=体重(kg)÷(身長(m))2で表され25未満となるように適度な運動を継続して行います。適度な運動は1回30-60分以上、週3回以上の有酸素運動を目安にします。しかし上記治療法を実行することは困難です。上記治療法にて改善効果がみられない場合に薬物療法を用います。高血圧の治療薬は全部で5種類ほどあります。1種類の降圧薬で効果が得られる場合もありますが不十分な場合には複数の薬を組み合わせて処方することもあります。
コレステロールや中性脂肪といった血液中の脂質濃度が慢性的に高い状態、もしくはHDL(善玉)コレステロールが少ない状態を脂質異常症といいます。もともとコレステロールはホルモン、胆汁酸などをつくる材料であり体にとって必要なものですが、多すぎると血中のコレステロール過剰(LDL(悪珠)コレステロール)となり動脈硬化を誘発します。また自覚症状がみられないことも特徴です。そのため血液検査や健康診断で異常を指摘されても受診されずそのまま放置されてしまうことも多いようです。しかし放置を続けると動脈硬化が進行し、やがて心筋梗塞や脳卒中などを発症させてしまう原因となり得ます。発症の主な原因はエネルギーの過剰摂取(食べ過ぎ)や偏食、喫煙、飲酒、運動不足などの環境要因が重なって引き起こされると考えられています。 治療は主に食事・運動の生活習慣の改善と薬物療法となります。栄養バランスのとれた食生活、ウォーキングや散歩などの有酸素運動を無理のない範囲で1日30分以上を目安に行い、喫煙習慣のある方には禁煙するように指導します。なお脂質異常には高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症の3つのタイプがあります。それぞれのタイプによって食事療法は異なります。高LDL(悪玉)コレステロール血症の方は動物性脂肪を含む食品とコレステロールを多く含む食品を減らし、植物性脂肪を含む食品を増やすように心がけます。また高トリグリセライド血症の方は糖質の多い食品やお酒を控えるほか摂取カロリーを適正にする必要があります。そして低HDLコレステロール血症の方はトランス脂肪酸の摂りすぎに注意します。このような食事療法や運動療法でも効果が得られない場合、コレステロールや中性脂肪を低下させるお薬を服用することで脂質コントロールするようにします。
痛風とはある日突然足の親指などの関節が腫れて激痛に襲われる病気で、この症状は突然発作的にみられることから「痛風発作」とよばれ、発作がおこると2、3日は歩けないほどの激痛を伴います。その後痛みは徐々に和らいでいきますが、正しい診断、治療を受けずにそのままにしていると同じような発作が繰り返しおこり、発作を起こすたびに病態は悪化していきます。痛風の背後には高尿酸血症という病気が潜んでいます。高尿酸血症とは血液中に含まれる尿酸が多くなっている状態をいいます(尿酸値7.0mg/dL以上の状態で高尿酸血症です)。尿酸は水分に溶けにくい性質で血液中では尿酸塩(尿酸の結晶)として存在しています。この尿酸の結晶は針状の形をしており、これが関節などに溜まっていくと激しい痛みを引き起こすようになります。これが痛風です。尿酸が増加する原因として尿酸が体内で多く産生される体質(先天性の代謝異常、無酸素運動の影響、過剰なアルコール摂取、肥満、高カロリー食)であること、尿酸の排出が悪い(遺伝的体質、腎不全など)ことがあげられます。痛風は尿酸値を下げることが重要です。それには食事療法が大切になります。プリン体(レバー類、干し椎茸、魚卵類、えび、いわし、アルコール飲料など)を多く含む食品の摂取を控え、栄養バランスの良い食生活に気を付けます。この他にも水分を十分摂取し尿量を増やし尿と一緒に尿酸を排泄するように心がけます。1日の尿量が2000ml以上になることが望ましいといわれています。禁酒、節酒も重要です。また運動療法も併せて行い肥満の解消も目指します。運動は無理のない範囲で軽度な有酸素運動(ウォーキングや水泳など)を1日30分以上行うようにしましょう。ただし激しい運動や精神的ストレスも尿酸値の上昇を招くといわれています。特に激しい運動で大量の汗をかいたときに水分を十分に補給しないと体内の尿酸値が一時的に上昇することで血液中の尿酸濃度が上昇し痛風発作を引き起こすことがあるため注意が必要です。
生活習慣の改善のみで尿酸値の改善がみられない場合、高尿酸血症に対して尿酸の生成を抑制する薬や、尿酸の排泄を促す薬などを処方します。尿酸値は7.0mg/dL以下を目標にゆっくりと下げていき、数値が下がったらそれを維持するようにします。
<プリン体を多く含む食品>
・牛・豚・鶏レバー ・牛肉や豚肉 ・イワシやアジなどの干物 ・白子、アンコウの肝
・車エビ、タコなど
<プリン体の多いお酒>
・ビール、日本酒、紹興酒、ワインなど
<プリン体の少ない食品>
・米、パン、そばなどの穀類 ・野菜・果物 ・海藻類 ・鶏卵 ・豆腐など
<プリン体の少ないお酒>
・焼酎、ウイスキー、ブランデーなど